病院のセキュリティ対策で必要な対策とは?対策のポイントを徹底解説
医療現場では常に患者の重要な個人情報を扱っており、その機密性と安全性を確保することはどの病院にとっても最優先事項といえます。もし万一、外部からの攻撃や内部の不正アクセスによって患者のデータが流出した場合、医療機関としての信用は大きく損なわれるでしょう。さらに、電子カルテや予約システムが停止すれば診療や会計が滞り、業務全体に深刻な影響を及ぼすリスクも考えられます。こうした事態を避けるためには、セキュリティ対策を「コスト」ではなく「必要不可欠な投資」と位置づけ、早急かつ計画的に取り組む必要があります。ここでは、なぜ病院で強固なセキュリティ対策が求められるのか、そして具体的にどのような方法があるのかを順を追って解説していきます。
目次
病院セキュリティ対策が求められる理由
病院は医療従事者と患者が行き交う公共性の高い場所でありながら、同時に高度なITインフラを要する環境でもあります。患者の個人情報はもちろん、電子カルテに記録される病歴や検査結果は極めてセンシティブなデータであり、もしそれらが漏洩すればプライバシー侵害だけでなく、医療機関としての責任も問われます。現代のサイバー攻撃は、フィッシングメールやランサムウェアといった高度化した手法で病院のネットワークに侵入し、システムを人質に取るかのように金銭を要求するケースも少なくありません。こうした攻撃はメディアでも大きく報道され、社会的信用が著しく低下する事態につながります。また、厚生労働省や個人情報保護法などによる法的規制の影響もあり、セキュリティ強化は組織としての遵守義務とも言えます。何より、医療の現場が停止すると患者の安全も脅かされかねず、病院運営において、セキュリティ対策は極めて重要な要素となっています。
病院セキュリティの基本対策とポイント
病院におけるセキュリティ対策は、大きく分けるとシステム面の強化と運用・教育面の徹底という二つの柱から成り立ちます。いくら最新のセキュリティ機器を導入していても、運用ルールが曖昧だったり職員への教育が不足していたりすると、思わぬ形で情報漏洩のきっかけを作ってしまうからです。この二つの要素をバランスよく整えながら、院内全体を挙げて「何をどのように守るのか」を明確にしていくことが重要となります。
システム面の対策
- ファイアウォールや侵入防止システム(IDS/IPS)の導入
- サーバーの暗号化
- 定期的なバックアップ
- 院内と外部ネットワークの分離
システム面の対策としてまず考えられるのは、外部からの不正アクセスを防ぐファイアウォールや侵入防止システム(IDS/IPS)の導入です。これらはインターネットと院内ネットワークの間を監視して怪しい通信を遮断し、ランサムウェアやマルウェアの侵入を防いでくれます。また、電子カルテを保管するサーバーの暗号化や、定期的なバックアップの実施も重要です。もし万が一サーバーが攻撃を受けて一部が破損したとしても、バックアップから迅速に復旧できる体制を築いておくことで診療への影響を最小限に抑えられます。さらに、院内と外部ネットワークを完全に分離する構成にしておくことも、セキュリティレベルを高める一つの方法です。これはインターネットと電子カルテ用のネットワークを切り離して運用することで、万一外部ネットワークが感染しても電子カルテへの被害が波及しないようにする狙いがあります。病院の規模や既存システムとの兼ね合いで実装可否は変わってきますが、実現可能な範囲で導入を検討する価値は高いと言えるでしょう。
運用面と教育面の対策
- 外部媒体の取扱ルールの明確化
- 定期的な研修やオンライン学習ツールの活
システム面での防御を固めても、ヒューマンエラーや内部不正による情報漏洩リスクが残っては根本的な対策とは言えません。そのため、職員が日常的に利用するパソコンや端末の適切な操作方法を周知し、パスワード管理やUSBメモリなどの外部媒体の取扱ルールを明確化する必要があります。院内のスタッフ全員が同じルールを守るためには、定期的な研修やオンライン学習ツールの活用も効果的です。さらに、重要な電子カルテや個人情報データにアクセスできる権限を厳格に管理し、誰がいつどの情報に触れたのかログを取得仕組みも欠かせません。ログがしっかりと取得できていれば、万が一不審な行動や不正アクセスがあった際にも早期発見と対処が可能になります。こうした運用ルールの徹底と社員教育の充実こそが、システム面の対策を実効性のあるものにし、院内のセキュリティレベルを底上げする大きなポイントとなるのです。
導入ステップと費用の目安
セキュリティ対策を本格的に導入するには、まず「何をどの程度守る必要があるのか」を洗い出し、段階的に対策を進めるのが賢明です。病院ごとに予算規模やITリテラシー、現在使っているシステムの状況が異なるため、最適解は一つではありません。むしろ自院の現状をしっかり把握し、その上で必要なソリューションを選定することが、投資対効果を高める近道となります。
定期的なバックアップの実施も重要です。もし万が一サーバーが攻撃を受けて一部が破損したとしても、バックアップから迅速に復旧できる体制を築いておくことで診療への影響を最小限に抑えられます。
要件定義・ベンダー選定の進め方
最初のステップとして、自院のセキュリティリスクを可視化し、対策の優先度を決める作業が必要です。例えば、すでに電子カルテを導入している病院では、そのシステムが古いバージョンのままかどうかや、サーバーが定期的にアップデートされているかを点検し、脆弱性の有無を確認することから始めるとよいでしょう。そこから、ファイアウォールや侵入検知システムの導入、ネットワークの分離など、必要な施策をひとつひとつ絞り込んでいきます。ベンダーを選ぶ際は、単に費用面だけではなく、医療業界での実績や導入後のサポート体制、緊急時の対応スピードといった要素もしっかり比較検討することが大切です。特に医療現場ではトラブルが起きても短時間で正常化が求められるため、経験豊富なベンダーのサポートは非常に心強いものとなるでしょう。
導入スケジュールと大まかな費用感
導入スケジュールは病院の規模や導入範囲によってまちまちですが、小規模なクリニックであれば数ヶ月程度、大規模病院になると数年にわたる段階的な導入計画を立てることもあります。費用については、ネットワーク構築やサーバーの更新、端末の調達にかかる初期コストだけでなく、運用保守やセキュリティ監査などのランニングコストも見込む必要があります。たとえばUTM(統合脅威管理)を導入する場合、機器の購入費用と合わせて月額の保守料や監視サービス料が発生するのが一般的です。このように複数の費用要素が絡むため、最初に全体像を把握し、院内の意思決定者とコミュニケーションを密に取りながら予算を確保するプロセスが不可欠です。適切なスケジューリングと十分なリソースの確保ができれば、システム移行やスタッフへの研修もスムーズに運び、トラブルを抑えながらより安全な環境を構築できるでしょう。
専門家のサポートと問い合わせ
セキュリティ対策は高度なIT知識が求められる上に、医療独自の制約や法的要件も考慮しなければなりません。そのため、すべてを院内だけで完結させるのは難しく、専門家やコンサルタントの力を借りるほうが効率的なケースも多いです。実績豊富なセキュリティベンダーや医療ITのコンサルティング会社は、病院の規模や特徴に合わせた最適なソリューションを提案し、トラブル時のサポートから運用定着のための教育までトータルで支援してくれます。特に初めてセキュリティ対策を大幅に見直すという場合は、まずは無料相談や現状診断を利用して、具体的な導入イメージと費用感をつかむとよいでしょう。問い合わせをしてみることで、自院に足りない部分や優先度が高いリスクがより明確になり、今後の方向性もはっきりしてきます。
医療情報システムの安全管理に関するガイドラインについて
医療現場では、患者の個人情報や診療データといったセンシティブな情報を取り扱うため、情報漏えいに対する防護策が非常に重要となります。厚生労働省が公表している「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(以下、ガイドライン)」では、医療機関がシステムを安全に運用し、電子的に取り扱われる患者情報を適切に保護するための具体的な方策が示されています。ここでは、トレンドマイクロ社のセキュリティ情報や厚生労働省の資料に基づき、ガイドラインの要点を概説します。
参考記事:医療分野のサイバーセキュリティ対策について|厚生労働省
1.サイバー攻撃の脅威と医療現場のリスク
近年、医療機関を狙ったサイバー攻撃が増加しており、ランサムウェアや標的型メール攻撃によるシステム停止や情報漏えいが大きな懸念事項となっています。トレンドマイクロ社が公開している最新のセキュリティ動向によると、攻撃者は医療現場のシステムの脆弱性を突き、業務の混乱を狙うケースが顕著です。医療機関は患者の生命・健康に直結する業務を担っているため、システム障害が発生すると診療の継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
2.ガイドラインの目的と基本的な考え方
厚生労働省のガイドラインでは、医療情報システムの安全管理を以下のような観点で実施することを推奨しています。
- リスクマネジメントの徹底
- システムを運用するにあたり、想定されるリスクを洗い出し、脆弱性や業務影響の大きさを評価・分析して対策を講じることが重要とされています。
- 物理的・技術的セキュリティ対策の実施
データセンターやサーバ室への入退室管理、システムのアクセス制御、通信の暗号化、ウイルス対策ソフトの導入など、複数の技術的対策を組み合わせ、総合的にリスクを低減させることが求められます。 - 運用体制・教育の充実
安全管理はシステムの導入だけでは不十分であり、セキュリティに対する職員の意識向上や、事故・障害発生時の手順(インシデント対応プロセス)整備も不可欠です。
3.守るべきポイントと具体的対策例
ガイドラインでは、医療情報システムを運用するうえで意識すべきポイントとして、以下の項目が挙げられています。
- アクセス制御の徹底
役割や権限ごとにアクセス範囲を分け、不要な情報への閲覧や操作を制限する。 - 通信経路の暗号化
外部ネットワークとのやり取りはVPNやTLSなどを利用して暗号化し、第三者による盗聴や改ざんを防止する。 - 定期的な脆弱性診断とソフトウェア更新
パッチ適用の遅延や古いOSの利用は攻撃者に狙われやすく、迅速な更新や診断が必要。 - バックアップの実施と復旧訓練
万一のデータ損失に備えたバックアップと、復旧手順のテスト・訓練を定期的に行う。 - セキュリティ教育の継続的実施
標的型メールへの注意喚起や不審な端末の利用報告など、職員の行動管理を強化。
4.今後の展望と対応の重要性
サイバー攻撃の巧妙化に伴い、医療現場のシステム保護はますます重要となります。ガイドラインを遵守したセキュリティ対策を講じるだけでなく、最新の脅威情報を定期的に収集し、対策を更新していくことが大切です。トレンドマイクロ社のセキュリティ情報も活用しながら、自組織に適したリスク評価と対策計画を継続的に見直すことで、患者の安全と医療サービスの安定提供を確保できます。
医療情報システムの安全管理は、単なるIT上の問題ではなく、患者の生命を守り、医療の質を維持するうえで欠かせない要素です。厚生労働省のガイドラインをはじめとする公的な指針やセキュリティベンダーが提供する知見を活用し、実効性の高い対策を講じることが求められます。
病院のセキュリティ対策を強化しよう
電子カルテや予約システムが当たり前の時代になった今、セキュリティ対策は病院の規模を問わず必須の取り組みといっても過言ではありません。患者のプライバシーを守り、医療サービスを滞りなく提供し続けるためには、システムと運用両面の強化が欠かせないからです。そして、それを怠れば情報漏洩や業務停止によって大きな社会的ダメージを被るおそれがあります。しかし逆に言えば、積極的にセキュリティ対策を導入すれば、病院の信頼度が上がるだけでなく、IT化による業務効率化や時間・コストの削減も大いに期待できるでしょう。専門家のサポートを上手に活用して、院内の現状を正しく把握し、最適な方法で安全性を高めていく。こうした取り組みを継続していくことが、患者とスタッフ双方にとって安心して利用・働ける病院を築くための鍵となるはずです。
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